インディーゲーム開発のディレクションで得た大切なもの


音楽ゲーム CHIP STEP 開発までの道のり

 

自身のプロジェクトですが、過去にTOWERという「チーム開発で期間内にゲームを完成させること」だけに注力したダンジョンゲームを作ったことがありました。まず、このゲームを完成させるまで、僕はゲームを作り上げたことがありませんでした。また、チーム開発で人をまとめて、プロジェクトを引っ張っていくことも初の試みでした。今思えば、ここでの僕の試行錯誤の立ち回りを目の当たりにしたメンバーが、後にCHIP STEPのメンバーとしてついてきてくれたので、このプロジェクトは無くてはならない存在でした。

2015年も終わりそうな頃、とりあえずTOWERを完成させて満足した僕は、特に宣伝もせず、雑にGoogle Playでリリースしたあと「じゃあ次は何を作ろうか」という話をメンバーにしました。その時、プログラマーのNESさんが「サウンド担当が2人もいるなら音ゲーを作ればいいのでは」という提案を持ちかけてくれたので、せっかくやるなら音楽ゲームを「ルール」から作ろうじゃないか、というところからCHIP STEPの開発は始まりました。

僕以外の、もう1人のサウンド担当は天沼さんで、世代的にも昔の音源に詳しい方でしたので、快くチップチューン音楽とステージ用の譜面データの制作を引き受けてくれました。

 

 

そして、ここに開発途中の提案書の一部を公開します(改良の結果、実際の仕様とは異なる部分が多くあります)

プログラマーさんは趣味で音楽ゲームをプレイされる方だったのが幸いなのですが、音楽の楽典には詳しくないということだったので、このような解説を交えたプレゼンを行いました。

僕は絵が描けないのですが、TOWERの時のようにフリー素材をお借りするのではなく、CHIP STEPでは全てオリジナルを用意することが1つの目標でした。

このようにMacのプレゼン用ソフトウェア Keynoteで図形と色とフォントのみでUIを表現し、提案の段階で具体的なモックアップを作っておくことで、後から自分でスプライトを用意しやすいようにしていました。また説明が下手でも、プログラマーさんにゲーム実装時のイメージを正確に伝えられるという点で一石二鳥の方法でした。

 

また、ゲームに実装されているドット絵に関しては、ユーザーが画面をタップしにくい場所を活用して、各楽曲のジャケット画像を表示させるという予定があったので、開発終盤にZmixさんお声かけしてドットを打っていただきました。

 

 

 


開発の手法

 

AQUEDUCTというチームでは、週1回ペースで、決まった曜日と時刻にSkypeで集まり、複数人による通話で進捗内容を持ち寄り、今後の方針を決めていくという流れで開発が進んでいきました。

何気にすごいなと思っているのが、1年半開発をやってきた中で、メンバーが事前の約束を忘れることなく、ほぼ定刻に参加してくれたということです。これはTOWERの時も同じでした。

別に僕は体育会系ではないし、安易に人を怒ることができるタイプでもないので「参加できないならそれでもいい、僕がなんとかする」というスタンスなんですが、こういった有志の集まりにおいて、メンバー同士の気持ちのつながりというものは、チーム開発を長期的に継続させる上でとても大切なものではないかと感じています。

そして、開発メンバーが初めて顔合わせをしたのは、ゲームのリリース後、2017年のデジゲー博でCHIP STEPを展示した時でした。今はこうして通話だけで、会ったことがない人とゲームが作れてしまう、すごい時代なのです。

でも僕は、まだプログラマーのNESさんとは通話をするのみで、実際に会ったことはありません。Twitterをやってないそうなので、いつか会ってお礼をしたいところです。

 


達成したこと、得たもの

 

・音楽ゲームの新しいルールを提案することができた

・ゲームの開発そのものをディレクションすることで、サウンド発注者の立場で物事を考えられるようになった

・開発チームを引っ張っていくためにプレゼンをしたり、楽しく議論をして、より良い結果を求めることができるようになった

・週1回の定例会を行うことで、自然とチーム開発でのPDCAサイクルの重要性に気づき、それを回していく習慣が身についた

 

実際にスマホ向けにリリースされたゲームはこちらから無料でダウンロードすることができます。

後述の理由により、iOS版をプレイされることをお勧めします。

 

 

 

 

また、ゲーム中の音楽はBandcampのサイトで無料で聴くことができます。

BandcampやBOOTHでサウンドトラックを購入頂くと、今後のゲーム開発の活動費に充てることができ、とても助かります。

 

 

 

 


その他、開発話

 

・音楽ゲームにおいてAndroid版が鬼門であったこと

CHIP STEPは当初からiOSでリリースすることを目標にしたプロジェクトでした。そもそも負荷が少ないシンプルなゲームですし、テスト段階で低スペックなiOS端末で遅延が発生しなければミドルウェアは必要ないと考え、そのまま開発を進めました。Unityで開発していたこともあり、結果的にiOS版に最適化したものに手を加える形でAndroid版をリリースする流れになったのですが、iOS版とは違って高性能な端末でないと遅延が発生する事が分かったので、ここで改めてミドルウェアの重要性を認識しました。業界人に聞いた話だと、このあたりは商業のプロでも苦労されているということだったので、まあ1つの経験として前向きにとらえて次にいかそうと思います。

 

・チーム開発でのディレクターという立場は、目に見えない部分での負担が大きい

僕も完全なフリーランスの人間ではないので、普段の仕事をしながらだと、それまで行ってきた個人の音楽アルバムがリリースできなくなるくらいには、ゲーム開発に時間を割いたつもりです。さらに他のプロジェクトのサウンド開発も並行してやっていることもあって、これでもうまいことやったつもりです。

チームで開発をやっている以上、個人のモチベーションとコミュニケーションによってゲームが作られていくのですから、こういったチームを引っ張る側の配慮や、見えない努力は人を動かす側の必然ともいえます。ゲームのプレイヤーにとっては、これらの苦労は知ったことではないと思うのですが、ゲームとしてリリースされた「目に見えるものだけが全てではない」ということを肌で感じたということは事実でした。

 

・ディレクターだけどプログラムをやっていない話

これはとても自慢できる話ではないのですが、僕はディレクターの立場でありながらプログラムのコードを一切書いていません。

なぜなら、特殊なルールのゲームを実現させなければならないのに、プログラムをよくわかっていない僕が手を出すことで、かえってプログラマーさんの手間を増やしてゲームの完成を妨げるようなことをしたくなかったからです。できる人がいるならやってもらう、その代わりにゲームの完成のために、自分はチームのためにできることを精一杯やる。これが重要だと思っていました。

じゃあプログラムをやってないのに、何に時間が取られるんだという話なんですが、少人数の開発とはいえチーム開発なので、自分が独自に考えたゲームのシステムやルールの面白さや必然性、合理性を「わかりやすく」伝えるための資料作り、というのがとても重要になってきます。これは個人的には楽しいのですが、とても時間と労力がかかるものなのです。

僕自身も「これくらい口頭でわかるだろう、仲間だから言ったことは直ぐにやってくれるだろう」という気持ちで、安易に相手に作業を持ちかけることは好きではないですし、そういう態度でメンバーがついてきてくれるとは思っていなかったので、相手が納得した上で、少なくとも頭の中でイメージしながら開発にあたることができるように行動してきました。

また、いくら自分が面白いアイデアだと思っていても、プログラマーさんに提案したゲーム要素の必然性、合理性を説明して納得させることができないものは「実現できないもの」として割り切ることで、とにかく自分がゲームのシステムやルールを資料にして説明できるものだけを企画にしていきました。それはつまり、シンプルだけど見せ方の工夫で少し新しいことやってるよ、というゲーム内容を実現させていくということが僕の使命だったのです。

 


 

かくして、素人が試行錯誤で指揮して作った音楽ゲームは完成に至りました。

インディーゲームの開発においてディレクターという立場を経験するということの楽しさ、難しさ、こういったものはサウンドの開発の先見性や提案力として生きてくるはずなので、今後も他のプロジェクトでチーム開発を楽しくやっていきたいと思います。

 

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

僕は今後も日本のインディーゲームの開発シーンについて知りたいことがたくさんあります。自分はこう思うとか、こういう体験をしたとか、質問でもかまいません。Twitterでリプライやメッセージを下さると嬉しいです。

こんな考えやポテンシャルを持っている人間だということを踏まえた上で、したたかにサウンド開発のお誘いやご紹介など、お待ちしております。共に良いゲームを作っていきましょう。