カミオリのサウンド開発・効果音編



カミオリは60種類の効果音が実装されていますが、基本的に僕は音楽しか作ってこなかった人間なので、実をいうと、1つのゲームでこの数の効果音を作るのは初めてのことでした。このような状況でありながら、前例のないゲームのルールに対してゼロからサウンドデザインをさせて頂くことができ、結果的にゲームタイトルが東京ゲームショウ2018に参加できたことを嬉しく思います。

カミオリの開発チームに加わって間もないころ、僕が初めに目標にしたことがありました。それは「紙を折って判子を押して、印影で足場を作ってキャラクターを進めていく」という独自のルールを分かりやすく表現するために、タッチスクリーン操作時の効果音にこだわるということです。なぜこれが重要なのでしょうか。

©︎ TeamOrigami / 白蜜柑

僕が2015年にプロジェクトに参加した頃の初期のカミオリはチュートリアルが無く、まだ紙を折ってできることの仕様が固まっていない状況でした。サウンド開発者としての立場なら、このような状況でもテストプレイを重ねているうちにすっかりゲームに慣れてしまうのですが、実はこうした慣れが危険で、普通のプレイヤーは知らないルールのゲームを第一印象で分かりづらいと感じたら、ものの数分でやめてしまうのは当然のことだからです。

いやいや、せっかくの新しいルールのパズルゲームなのに、プレイヤーが考える前にやめてしまうような環境にするのはもったいない、ということで効果音の側面からもゲームのルールをサポートしていこうという考えに至ったのです。

画面を触ることで、画面内で何が起こったのか理解させる

カミオリの開発の初期に感じていたことは、初めてこのゲームを触る人にとっては、第一印象として操作方法の見当がつかないことと、操作ができたとしても画面内で何が起こっているのか理解できないのではという疑問でした。これを効果音の側面から補うためには、音によって開発者がプレイヤーに何をさせたいかという意図をプレイヤー自身に想起させる必要があります。

まずカミオリで遊ぶために必要なのが「ステージ画面を紙に見立てて折ってもらう」という操作です。普段の生活で紙を折ることはよくあると思うのですが、この行為で明瞭な音が発生することはまれです。しかし、カミオリのゲーム画面では紙を折ることで画面がダイナミックに変化するので、そこで演出を兼ねた確認音が鳴らないのは不自然なのです。この音は意外に重要で、そもそもカミオリのゲームを「ステージを折ってパズルを解くゲーム」だと理解していない段階のプレイヤーにとっては、単に画面がバグったように見えて、何が起こったのか分からないという状況さえありえます。

この紙を折ったときの音は、明確に誰もが紙をイメージできる音を鳴らすことにしました。これは音が出やすいようにシワをつけた書道の半紙を使い、少し大げさに音を立てたものを収録しています。ちなみに同じ紙の音でも「紙を折ったとき」と「元に戻すとき」の音を明確に変えることも、画面の変化に対するプレイヤーのイメージの補完に役立っていると思います。

動画を再生すると効果音が試聴できます

このプレイヤーのイメージを補完する、という考えはサウンドデザインにおいて重要なことだと思います。もしかしたらプレイヤーは初めて紙を折るに至るまでに、別の操作を試行錯誤するかもしれません。この試行錯誤の時点でプレイヤー自身が「これは紙っぽくて折れそうや」ということを感じてもらうために、紙を折る周辺のUIのサウンドは全て紙関連の音で統一しています。具体的な例としては、紙を折る前の確認音、折らなかった時のキャンセル音、バツが出て折れない時の音、これらは小さなダンボール箱をこすったり、叩いたり、フタを開けたりしたときの収録音から作っています。

そうです、いきなり紙を折るに至れなかった人でも、こうした事前の操作で折れそうな感じを演出しておき、実際に折ることができたときに「紙を折ったとき」の音が鳴ったら気分が良いかな、というおもてなしがイメージの補完なのです。

このように、カミオリは「紙を折ってパズルを解く」というルール自体がタッチスクリーンに最適化されたものであったため、もちろん紙を折る操作時の効果音もタッチスクリーン用の「見えないボタン、見えないUI」として捉えて、それを意識して音の質感を作る必要があったよね、というお話でした。

次回の記事は「カミオリのサウンド開発・音楽編」です。それではまた。


コミックマーケット95では「2日目東地区 “ツ “37b」のTeam Origamiのスペースにて、カミオリのゲームが展示され、サウンドトラックCDを始めとして、さまざまなグッズが頒布されます。よろしく願いします。