qSPCと物理モデル音源


PA Gamesさんより、qSPCにはユーザーが利用できるサンプリングデータをいくつか同梱したいとの要望があり、こちらでマイペースに準備中です。スーファミ実機で再生可能なサウンドデータを生成できるqSPCそのものに関しては、作者のブログを読んでいただくのがわかりやすいかと思います。

データ作成にあたり、いろいろと音色の権利周りのことを調べてみましたが、やはり配布用のサンプリングデータとなると、波形データがオリジナルである必要があり、案外ハードルが高くて悩ましいところです。

ありふれたアコースティック系の楽器ならば配布用に録音してサンプリングデータ化しても、誰も文句は言わないだろう……と考えていましたが、まず楽器を集めたりとか、そういった環境を用意するためにコストがかかりますし、結果的に大きくデフォルメされたデータを得るために、わざわざリアルから削り出すようなやり方は合理的なのか、という疑問がありました。

そこで安楽椅子的な解決方法として、ソフトウェアの物理モデル音源でパラメータを設定して楽器のプリセットを作り、波形として出力したものをサンプリングデータとして用意することにしました。この方法だとPSGやFM音源とかでもよかったのですが、スーファミらしくないですし、すでに誰かがやっていることなので、あえてやらない方向にしました。

Sculpture

ここでいう物理モデル音源とは、あらかじめ特定の楽器の物理構造や、ヴィンテージ機材のアナログ回路をソフトウェア上で忠実に再現しましたという類のものではなく、自分で楽器の素材を選んで、それを叩くのか、つま弾くのか、口で吹くのか、といった要素から始まり、様々なパラメーターの組み合わせによる物理演算によって、自由に楽器の出音を作ることができるというアプローチのシンセサイザーのことです。だからこそ、自分で作ったプリセットであれば、物理演算による演奏で出力された波形をサンプリングデータ化したとしても、それに対してシンセのメーカー側もわざわざ権利を主張しないだろう、という算段です。僕はLogic Pro X付属のSculptureを使っているので、何らかの理由があってAppleさん直々に「ダメダヨ」と言われない限りは、これが正義だと思っておきます。

ちなみに配布用のサンプリングデータで奇をてらった音色は誰も求めていないと思いますので、ありふれた楽器のサウンドを模倣したものをqSPCの付録とする予定です。

スーファミのPCM音源といえば、既存の楽器の音をサンプリングし、オーケストラやバンドサウンドを再現するというのがおなじみのやり方ですが、あえて当時では手にすることができなかった物理モデル音源を用いて、この世に存在しない楽器を自分でシミュレーションしてサンプリングし、スーファミのサウンドシステムで再生させてみるのもレトロモダンの思考のひとつかもしれません。

僕はそのメソッドで、そのうち音楽を作ってみたい。