スーパーファミコンのオリジナルゲームに効果音をつけてみる


今回はPA Gamesさんの「SNES-Taco」というゲーム開発プロジェクトのサウンド開発、とりわけ効果音について考えていることを書いていきます。ここ1年間、僕がサウンド周りで何をやっていたのかというと、PA Gamesさんの独自開発のサウンドドライバとホストプログラム、開発ツールであるqSPCの仕様の範囲内での音楽や効果音の制作方法を探り、自分なりにノウハウを固めていました。

SNES-Tacoのプロジェクトでは、PA Gamesの中のプログラマーであるgyuqueさんの手によって、豊井さんのキャラクターのスプライト・アニメーションの挙動周りがどんどん出来上がってきています。そのGIFアニメーションをtwitterで見たり、実際にプロトタイプ版のゲームをプレイさせてもらってから、音楽や効果音を提案しています。プロトタイプ版では既に一部の効果音が付いているのですが、まだ開発中のものなので、ここでは制作段階で撮影した映像でご了承ください。

 


  • 試作効果音の作例について

ここではプレイヤーのタコが、魚を取った時のカリカリ音に焦点をあてます。何気ない音だと思いますが、単純に拾ったときの気持ち良さを始め、画面右上に魚が移動してカウントされるときの挙動と、この世界の魚がどういったものであるのかを音の側面からプレイヤーに対して、わずかな時間で印象づけるようにしています。これを表現したいが為に、物理モデル音源で「キャットフード」をイメージした楽器の波形を生成し、録音してサンプリングを行いました。

動画ではネコが魚を地面に落とすと、魚が地面で跳ね続けるという挙動があります。以前、gyuqueさんと豊井さんと3人で話し合いをする機会があったのですが、両者ともこの挙動にこだわりがあるように感じました。それほどこのゲームにおいて、魚というオブジェクトは重要な存在なのです。

ならば、プレイヤーが跳ね続けている魚を拾って「獲得」したときの音は、このゲームにおける魚の「記号感」を効果音という見えないUIで、しっかりとアプローチすべきだと思いました。ゲーム画面をよく見ると、地面に落ちた魚は形を変えずに延々とバウンドし続けるので、この世界の魚はプニプニしたものではなく、固形物であることが分かります。さらにゲーム画面では猫が走りまわっています。重要なのが、ここで連想するものが「キャットフード」であるということです。

僕が感じたキャットフードに対する音の印象はというと、猫がカリカリと食べる音や、フローリングに落としたときの音を思い浮かべました。普通に考えると、そういった現実世界の音を素材として収録すればよかったのですが、ネコは飼っていないですし、キャットフードもありません。ただ、普段からの僕の考えとして、音楽に限らず、生録をすれば良いものができるとは限らないと思っているので、あえて皆が避けそうな物理モデル音源で波形素材を作ることにしました。そうです、波形からジェネレートしてしまえば、キャットフードのメーカーに音色の権利を主張されることもないでしょう。

 


・ただの効果音、音楽ではなく、ゲームサウンドそのものと向き合う

けっこう力説してきましたが、このCat Foodという効果音、サンプリングデータのみでいうと、わずか299バイトしか使用していません。音色の波形の特徴によるので一概にはいえませんが、例えば32kHz,16bitのクオリティで0.3秒程度サンプリングし、PPSE部さんのC700でBRR圧縮をかけても、平均で3KB程度は必要になってきます。なぜこれより少ないデータで済むのか?

それは効果音を鳴らすとき、現代的なやり方で効果音を録音した波形データをストリーミング再生させるのではなく、最小限の波形データだけをサンプリングしておき、スコアデータで音程の変化をつけてやることで「効果音を演奏して表現する」ということをやっているからです。

誰にでも分かりやすく説明すると、サウンドテストの動画で「カリカリッ」や「ミャァゥ」と、0.5秒くらいの時間をかけて鳴っている効果音は、初めから波形全体が録音されている状態なのではなく「カッ!」や「ニャ!」ぐらいの一瞬の波形に対して、譜面をつけて再生しているのです。こうすれば、小さなサンプリングデータから、譜面しだいで様々な効果音を表現することができます。

またFish Getという効果音の場合は、波形データを切り替えることで、1つの効果音内で2つの音が演奏されています。

さらに応用編として、1つのCat Foodのサンプリングデータとスコアデータから、上記のような「時間が止まっていること」を表現するための、音楽とも効果音ともつかないような演奏も可能です。これが鳴っている間は1トラックを占有し続けるのですが、効果音はプレイヤーとエネミー用で2トラック分は常に空けておく予定なので、エネミー用のトラックで鳴らしておけば、プレイヤーがジャンプしたり魚を取ったりしても効果音を鳴らせるので大丈夫ですね。

今回は効果音でしたが、プロジェクトが煮詰まってきたら、音楽に関する記事も書きたいと思います。

 


音色の権利関係について考えてみた記事はこちらです。