スーファミサウンド劇場 第2話 そういう世代


結局、PA Gamesさんの連絡先は聞けなかったが、このままでは諦められない。

そこでGoogle先生にたずねて、なんとかDRANEKO SLAYERのプレゼンを担当した方のTwitterアカウントを発見する。

僕は50代の元スーパーファミコンソフト開発者ではないので、まずは自分ができることを列挙しつつコンタクトを取ってみることにした。

 

◆ ご縁があった

名はU氏といった。Twitterでのやりとりから察するに、おそらく僕と同じ世代の人間だろう。終始丁寧な対応で、どうやらサウンド担当として受け入れて下さるようだった。嬉しかった反面、僕自身が身の程をわきまえていない怖さのようなものを感じていたが、それは根気でねじ伏せていくほかない。無知であるなら、せめて指示待ちではなく、自らできることを提案し実行していくスタイルでいこうと考えていた。

U氏はスーパーファミコンのゲームを作るにあたり、権利的に問題のあるプログラムのコードを含まないように配慮しているそうである。もちろんサウンドも例外ではなく、この時点でサウンドドライバも自分で作ることにしたと仰っていた。また、実機で再生させるためのサウンドプレイヤーが入ったROMイメージを生成するために、専用のコンパイラも自作するらしい。そこで、コンパイラに渡す譜面データはMML(ミュージック・マクロ・ランゲージ)で書いてくれないかということだった。

 

◆ 現代のMML、FLMML

MMLといえば、高校生の頃にインターネットで初めて知ったのを思い出す。その2001年の時点でMIDIデータを打ち込める音楽制作ソフトは成熟しつつあった。すでにお気付きのとおり、僕は明らかにMMLに思い入れがある世代ではないので、その趣旨を理解できないでいた。MMLを知らない人でも、テキストだけで譜面を表現するということが、いかに可読性に乏しく煩雑な行為であるか、想像に難くないと思う。

あれから15年が経ち、自分自身でレトロゲームのサウンドについて調べたり、メールでU氏の話を聞いたりしているうちに、ようやくMMLの存在意義や趣旨がわかってきた。なにより、個人が作ったスーファミの新作ゲームの中で、自分が作ったBGMやSEを鳴らすことができるのであれば、手段は選んではいられない。

そうそう、U氏はコンパイラを自作するとのことだったが、コンパイラによってMMLの方言は様々なので、どのようなコマンドが使えるようになるのかがわからなかった。そこで、ひとまずはFLMMLの記法がベースになるとの情報を頂いたので、それを1通り勉強することにした。FLMMLはニコニコ大百科の「ピコカキコ」で利用されている現代のMMLの1種であるので、何よりも情報の多さが心強い。

僕は仕事の合間にも大学ノートにMMLを書いていった。すると、次第に文字の羅列を見ることに抵抗感は少なくなっていった。

 

◆ カレントディレクトリって何ですか

この時、U氏の心にも火がついていたのか、わずか1〜2ヶ月程度で最低限のサウンドドライバ、譜面データ、音色データ、サウンドプレイヤーが入ったスーファミのROMを生成し、実機で動かせる段階までになっていた。このお手軽な変換ソフトともいえるものはqSPCという名前で、さっそくテスト用のプログラムが送られてきた。

ただ、ここで問題があった。僕は基本的にGUIに慣れきった人種であり、U氏が作ったCUIのコンパイラを実行させることができなかったのである。

こうして僕のスーファミサウンド開発は、コマンドプロンプトの使い方から調べていくという、とても情けないところから始まった。

つづく