スーパーファミコンの音色とその権利


毎度おなじみ、PA Gamesさんの「スーパーファミコン実機で動くゲームをドライバや開発ツールから自作する」というプロジェクトの話です。僕はサウンド担当として、音楽や効果音を作っています。

またそれに付随して、サンプリングデータやMMLの作成といった開発を昨年ぐらいから独自研究でやってきました。本記事からは年末年始の連載として、2017年に考えていたことを書いていきます。まずは音色とその権利に関してから。


・スーファミらしい音

なんなんでしょうね、僕もサウンドの仕様に触れるまでは、スーファミといえばエコーやディレイやろ、ぐらいに思っていました。今では、サンプリングデータの仕様である「BRR」と、それを平均律の音程に載せて演奏させた時のサウンドの粗さを補う「ガウス分布補間」の機能こそが、磨りガラスのようなスーファミサウンドの核になっていると感じています。

さて、権利関係の話の前置きとして、スーファミサウンドの制作の話をします。手持ちのDAWとPPSE部さんのC700を使ってお手軽にスーファミのような音を出してみたい、という方がおられましたら、手始めにRolandさんが90年代に販売していたSCシリーズの音源からサンプリングの練習をすることをオススメします。

今さらハードウェアMIDI音源なんてという方は、本家が販売しているSound Canvas VAというソフトウェア音源を購入するとよいでしょう。

 

これらの音源は、音色としても楽器のキャラクター性がわかりやすくなっています。具体的にいうと、あらかじめデータ削減のために波形が単純化、パターン化されているということです。ゆえに1サンプル単位での波形の切り出しも行いやすいですし、実際にサンプリングするデータも最小限で済むことになります。

当時のゲームサウンド開発者が、いかに音色の権利関係をクリアして、こうした既存のPCM音源の楽器をサンプリングしていたのかは定かではないのですが、ストリングス系の音色はかなりスーファミっぽいものに仕上がるということだけは経験としてお伝えしておきます。

僕自身の今後の課題としては、こういった90年代の汎用性の高い音源を使わずに、現代的な独自の手法でキャラクター化、記号化された音色セットをゲームタイトルの世界観に合わせて作っていくということです。どうせ今スーパーファミコンのゲームを開発するなら、少しでもいいから当時のプロがやってなかったことをやっていきたいですね。


・音色、波形データの権利

音楽業界ではサンプリングという手法で音楽を作ることに対して、様々な議論があります。スーファミも波形メモリのお化けのような制約があるとはいえ、PCM音源を搭載するがゆえに、この話を避けては通れないでしょう。

僕の考えとしては、PA Gamesさんが掲げられている、権利的に問題がないオリジナルゲームを作るという観点において、少なくとも既存のゲームソフトから持ってきた音色データを拝借することはできないと解釈しています。グラフィックスの話で例えるならば、キャラクターのスプライトを無断で使用して許されるか、といったことを考えたとき、それはありえない話だからです。

さらにいうと、前項でお伝えしたようなPCM音源を搭載した楽器から録音してサンプリングを行う際も、そのデータの取り扱いには注意が必要です。こうした音色データを持つ楽器には、固有の波形そのものに「素材としての権利」がメーカー側にあります。このため、多くの楽器メーカーは「楽器として利用した結果としての録音物の配布を容認する」という曖昧な方針をとっています。

過去にPCM音源の楽器を扱っている楽器メーカー何社かに問い合わせてみましたが、やはり露骨に音色そのものをサンプリングして、例えばWAVやBRRファイルを単独データとして配布するという行為は、たとえ編集や大幅なダウンコンバートを伴っていたとしても、コピー品をばら撒いているとみなされるようでした。

とはいえ、さすがに楽器メーカー側も、個人が演奏目的でデータを固めたSPCやROM化したものまでに言いがかりを付けてくるとは思えない(だったらストリーミング化されたサウンドデータもダメだという話になる)ので、そこは安心してよいです。グレーゾーンだなあと思うのが、メーカーが作ったゲームソフトから音色データを取り出して、それを使って演奏して誰かに聴かせるといった場合です。ファミコンの音源などはハードウェアをバシバシ叩いているだけなのでよしとしても、音色データはそうではないので、これも同人誌のような形で「容認」されているものと解釈しておく方がよいでしょう。

 

qSPCというサウンド開発ツールには音色データを同梱する予定ですが、これに関しては不特定多数の人にデータを配布することになりますので、物理モデル音源を使って波形から自作するということをやっています。

こんな具合に、サウンド面からも法令遵守でスーパーファミコンのゲームを開発しています。


2017.12.28 追記

効果音の開発に関しての記事も書きました。